夜明けまで15,000マイル (2004年9月〜2010年5月まで)

今日もうまいぞいや!その3



雨は、とうに止んでいた。

仕事も終わり、私の足は自然「うまいぞいや哲」に向く。

ビル群を縫って、小道に入り、
木倉町の、やや奥まった所に、
プログレ割烹「うまいぞいや哲」はある。

「毎度〜^^」

暖簾をくぐると、今夜は割りと盛況だ。
見事に席が埋まっている。

「お〜!マンプリどん!よー来た。よー来た。」

こんな風に出迎えてくれたのは、

―いつものようにいつものごとく、
―例のように例のごとく、

すっかり出来上がってしまっている「てむぞう」氏だ。

そして、その横にいらっしゃるのは「ずん」さん。

すっかり、いつものメンバーである。

私は、彼らの真ん中に無理やり割り込むと、

「哲さん、ビールお願いしまーす。」

来た傍から、早速、彼らの勢いに染まってしまう。
「うまいぞいや」とは、そんな店なのだ。

さーて、今日のアテ(肴の事)はと〜。

壁に掛かった小さな黒板が、ここでのメニュー。

―秋刀魚の刺身。
良いねぇ、季節モンだし。

―タンシチュー
2日かけて煮込んだここのタンは絶品なんだよなぁ。

―秋の夜長はプログレ
そうそう、これも旨・・・え!?

主人は私の素振りに気付き、そして、不敵にニヤリと笑う。

しかし、どうにも興をそそられた私は、

「すいませーん、『秋の夜長はプログレ』一つお願いしまーす。」

まんまと主の挑発に乗っかってしまう。

主の包丁を持つ手がピタリと止まった。

やおら私の方へ一瞥をくれると(極めて好色な眼差しで)、
隅の方へわざわざ出向き、何やらゴソゴソ探し始めた。

そして、おもむろに1枚のCDを取り出す。

「Dark Side of the Moon」

たちまち店内に立ち込めた「秋の夜長はプログレ」は、
その1曲目、「Speak To Me/Breathe」。

周りの方々も、実にうっとりと聴き惚れ始めた。

「1曲500円ね。」

あぁ、プログレ割烹!
あぁ、「うまいぞいや哲」!

暴利を吹っかけられながらも、次第に、「うまいぞいや」に酔いしれていく私。

「この曲をかける、哲の根拠が分からん!」

秋の夜長に、てむぞう氏。

「自転車乗りが行く天国は、いつも追い風が吹いていて、それから緩い下り坂しかないんだ。」

秋の夜長に、ずん氏。

その心もて
遠き都に帰らばや
遠き都に帰らばや
2004年09月25日(土) No.1386 (プログレ割烹うまいぞいや哲)

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