夜明けまで15,000マイル JGCSFCマイレージ,クレジットカード海外旅行記

今日も、うまいぞいや！

「うまいぞいや」の暖簾（のれん）をくぐると、
いつものように、喧騒が飛び込んで来る。

【参照】　「うまいぞいや哲」

今日のネタは、
ビンセントギャロの「バッファロー６６」。

主である哲さんは、こんなプログレ気違いが大好きだ。

私は、甘エビを刺身に、ビールを煽る。

横では、
これも良く見る風景の、飲み潰れて、すっかり寝込んでいる、てむぞう氏。
彼が乗る白河夜船は、今日も浜中がホームランを打っているに違いない。
（この日は、巨人戦。井川がボコボコに打ち込まれた日。）

「そんなトコで寝てるんやったら、さっさと帰らんかいっ！」

ギラリとした目で、
これまた、いつものように毒づく哲さん。

「う、う～ん」

もそりと動き出す、てむぞう氏。

しかし、感心してしまうのは、
起きたての妙にぎこちない動きながらも、

「哲～、おかわり～」

ニュッとグラスを差し出す、てむぞう氏。

あぁ、そんな姿は、まさにノンベエの鏡。
何やら後光が差している。

「無えっ！お前にやる酒なんて、もう無えから、さっさと帰れや！」

ヤキモキしながら、
しかし、意外にも次なる展開を心待ちにしている私。

「ここぁ、居酒屋やし、酒ぇ、あるやんけ」

てむぞう氏は、うつむきながら、精一杯、反論するが、

「そんだけ酔っ払ってる奴に、売る酒なんか無いっちゅうねん！」

哲さんは、双眸鋭くそう言い放つ。

「誰が、酔っ払いやねん、ごらぁ」

おぉ、負けじと、てむぞう氏、
見事に泥酔している方しか言えないようなセリフを吐いて返す。

参考までに、
ここの常連であるタカノ氏から聞いた、てむぞう氏の武勇伝を書いておこう。

「いや、前ね、竪町の通りをタクシーで過ぎようとしてたんだけど、
　阪神のハッピ着た奴が、チャリンコ乗っててさぁ、
　そいつが、警察に職務質問されてたんやわ。
　変わった奴が捕まっとるわい、なんて思って通り過ぎたんだけど、
　後で、哲さんにその事を伝えたらやね、
　『そりゃぁ、絶対ぇ、てむぞうやって！
　確か、あいつ、そん時、浜中のハッピ着て、帰ってったぞ！』
　って言われてさ。
　で、実際そうだったんだけど、
　ホント、世間って狭いよねー」

・・・。

でも、これって、世間が狭いって言う話なんだろうか？

（と言いつつも、私も、赤星のハッピ着て、片町を練り歩いた経験があるので、
じぇーんじぇん、他人の事は言えましぇーん＾＾）

ところで―。

散々ゴタを巻いて漸く（ようや）く帰りかけようとした、てむぞう氏、
私に向かって、

「お～、博士～、ちょーっと油断して、ちょーっと酔っ払っちゃったみたい～、ごめんね～＾＾」

なんて言いながら、立ち上がった。
（てむぞう氏は何故か私の事を「博士」と呼ぶ。何で？）

それを聞き咎（とが）めた主、
彼はこんな温かい励ましの言葉で、てむぞう氏を送り出して下さった。

「お前の人生、油断ばっかしやないけっ！」

店内では「FOCUSⅢ」の「SYLVIA」が流れている。

主の言葉が彼の耳に届いたかどうかは定かでないが、

「ほんじゃ、またね～」

それでも良い調子で、てむぞう氏は店を後にした。

ちょっと心配になった私は、
入り口のドアから、ぬっと顔を突き出して、帰って行くてむぞう氏の後姿を眺めた。

煌々とした月明かり。

肩を落とし、少し暗くなった通りを、よたよたと歩いている。

確か、次の日は休みだと仰ってたっけ？

恐らく、家へ辿り着けば、きっと、
泥のような深い眠りに陥（おちい）ってしまう事だろう。

そして、幸運な事に、、
ダイナマイト打線の爆発を、その日もう一度、見る事ができるのである。

2004年05月26日（水） No.1383 (プログレ割烹うまいぞいや哲)

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